経営戦略とは、企業戦略+事業戦略+機能戦略

経営戦略とは、企業戦略+事業戦略+機能戦略

みなさま、「経営戦略」と聞いて、どのような内容を思い浮かべますでしょうか?、競合他社に打ち勝つための施策を考えることであったり、事業成長に向けてのビジネスモデルを考えたり、はたまた、多角化やM&Aをおこなうことであったりと、人それぞれ異なったイメージを持つのではないかと思います。現に、「経営戦略」という用語は、用いられるシチュエーション・文脈によって様々な意味を持ちますし、研究者によっても考え方や定義が異なるというのが現状です。この記事では、その中でも抑えるべき、「経営戦略」のレベル、構成要素を説明します。

経営戦略≒企業戦略+事業戦略+機能戦略

経営戦略は、戦略を策定する階層や目的によって、大きく以下の四つに分類されます。

  • 全社戦略
    企業全体、企業グループを単位に成長領域の選択(事業の取捨選択・M&A)とその領域間での資源配分をテーマとした戦略
  • 事業戦略
    特定事業の競争優位性と収益性の拡大をテーマにした戦略
  • 機能別戦略
    事業における機能(R&D、購買、生産、物流、販売、マーケティング、財務、人事など)ごとに立てる戦略
  • その他戦略
    ある特定の目的やテーマに関する戦略(DX戦略、IT戦略、知的財産戦略など)

一般的に、企業としての経営戦略を立てる際は、最初に全社戦略を構築した上で、それを事業戦略・機能別戦略へと落とし込んでいきます。仮に、単一事業しかもたない企業、例えば専業メーカーやスタートして間もないスタートアップであれば、全社戦略=事業戦略となり、経営戦略とは、特定事業の事業戦略およびその事業の機能別戦略を立案することを意味します。一方で、複数の事業から構成されている企業では、各事業の戦略を考える前に、ヒト・モノ・カネという限りある経営資源をどのように配分すべきなのか?を考える企業戦略がまず議論されなくてはなりません。

このように、企業の状況や、その当事者によって戦略とは意味合いが違いますので、まずは、どのレベルの何を目的とした戦略なのかを明確にする必要があります。以降では、企業戦略、事業戦略、機能戦略それぞれに関して詳しく述べていきます。

企業戦略とは「成長戦略」であり、「経営資源の配分」

企業戦略とは、単純にいうと、企業がどの事業領域(事業ドメイン)で戦い、どのような事業の組み合わせ(SBU、事業ポートフォリオ)を持ち、それらの事業の間でどのように資源を最適配分するかを決定することといえます。

まず、事業領域を決定するためには、企業の社会的役割、企業理念・ビジョン・パーパスを軸にして、企業の置かれた経営環境と自社がそれまでに構築してきた経営資源をベースに、中長期的に達成する目標および実現するための方向性を定めることになります。この軸がないと、規模の拡大のために関係ない事業への多角化がおこなわれ、関係ない企業の寄せ集めとなり、事業間のシナジーも発揮できなければ、意図した人材の獲得も難しくなります。また、自社の経営リソースおよび外部環境を理解したうえでのポジショニングをしないと、戦う前に負けの状態になりますのでは、このステップは非常に大切になります(当たり前ですが)

次に、決定した事業領域において、戦略立案の単位となる事業(SBU)を定義しますが、基本的に、企業が保有する経営資源(ヒト、モノ、カネ)は有限であり、潤沢にあまるケースは皆無です。その中で、各SBUの状況を踏まえたうえでSBU間での経営資源配分を行う、特に、成長する事業に積極的に経営資源を配分することにより中長期目標の達成を目指すことになります。これが、時として企業戦略とは成長戦略とも呼ばれる所以です。

事業戦略とは、「競争戦略」であり、「経営資源の活用」

続は、事業戦略です。事業戦略とは、選択された事業の範囲を定義し、そこでの競争上のポジションを明確にしながら、与えられた経営資源を最大限活用して顧客へ価値提供することで、売上・利益を実現し、経営資源を拡大していくことといえます。

まず、企業戦略によって配分が決定された経営資源(ヒト・モノ・カネ)が、各事業の責任者へ渡されます。各事業のトップは、その経営資源をつかって、基本的には事業の成長(PPM的に言うと、売上を拡大、利益成長をさせつつ、シェアアップをはかる)を目指します。その中で、企業戦略で全社の事業領域を決定したのと同様に、事業戦略では、事業としての企業理念・ビジョン・パーパスを定め、現状分析・中長期目標を定めたうえで、実現手段を考えることになります。この実現手段というのが市場×製品であり、どのような顧客市場にどのような製品・サービスを提供するのかという、いわゆる事業の範囲を定義することとなります。

次に、その事業範囲の中において、競争優位性を確立するための方針を考えることになります。競合他社と直接競争するのか回避するのか、競争するのであれば、コストか差別化かなど、いかに、戦い勝ち抜い抜くか?を考えることになります。

これが、時として企業戦略とは成長戦略とも呼ばれる所以です。競争戦略にはポーター、コトラーなど、いくつかのモデルがありますが、また別の機会に詳しく説明します。

機能別戦略があって初めて戦略は実行される

最後が機能別戦略です。機能別戦略とは、事業戦略を具体化することであり、対象とする顧客に対して提供する価値とその提供法を定め、それを実現するための機能毎の戦略を立てることといえます。

その際、まず実施すべきは、いわゆるマーケティング戦略の立案です。事業戦略によって定義した事業範囲において、STP、すなわち、市場を同質のグループに細分化し(S:セグメンテーション)、その中で積極的働きかけるターゲット顧客およびその顧客ニーズを定義し(T:ターゲティング)、他社と異なる自社の製品・サービスの特徴を明確化する(P:ポジショニング)といったことをおこなうとともに、マーケティングミックス(4P)により、顧客に対し、どのような価値(製品)をどれくらいの対価(価格)でどのように(流通チャネル)提供していくか、自社や自社製品と、どのように関係を構築(プロモーション)していくかの計画を立案します。

次に、上記で立案したマーケティング戦略が、自社のバリューチェーン、すなわち、研究・開発、調達・生産・製造、営業・販売、物流、サービスという各機能とどのように関係しているかを踏まえて、機能毎の戦略を立案する。そして、各種戦略を支えるインフラストラクチャーとしての組織・制度を決めることが必要です。

以上、実現性ある機能別戦略を立案し、確実にやりきることで、事業が強化されることになります。

まとめ

本記事の内容を箇条書きでまとめると以下となります。

・経営戦略とは、企業戦略+事業戦略+機能戦略であり、企業戦略→事業戦略→機能戦略と順次落とし込まれる。
・企業戦略とは「成長戦略」であり、「経営資源の配分」
・事業戦略とは、「競争戦略」であり、「経営資源の活用」
・機能別戦略があって初めて戦略は実行される

以降の記事では、各戦略に関して、詳しく説明するとともに、実践例・失敗談を紹介していきます。

また、経営戦略の立て方に関しては、笠原先生の本がシンプルでわかりやすいと思います。もっと詳細を知りたいと思った方はぜひ購入してみてはいかがでしょうか?