サラリーマンの年収はポジショニング(業界×職種)で8割決まる
「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」

サラリーマンの年収はポジショニング(業界×職種)で8割決まる<br>「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」

前回の記事では、収入を得る方法として4つのポジションと、サラリーマンが富裕層に至るためのロードマップをご紹介しました。ここでは、ロードマップのSTEP1となる収入アップの方法をご紹介します。

この記事では、サラリーマンの年収は8割はポジショニングで決まるということ、そしてそのポジショニングとは「業界」と「職種」の組み合わせであり、具体的にどのような「業界」「職種」がおすすめなのかをご紹介します。

努力と年収は比例しない世の中

私たちの年収はどのように決まるのでしょうか?
年収に関してよく聞く誤解として、次のようなものがあります。
「年収が高い仕事は、特殊な知識・スキルが必要」
「年収が高い仕事は大変。残業・休出あたりまえ」
「年収が高いと、すぐにクビになる」

もちろん、医師・弁護士等の士業は一般的に年収は高いですし、寝る間も惜しんで働くことで高い年収をもらっている人もいますが、必ずしもイコールではありません。
忙しくなくても年収1000万円の人もいれば、過酷な条件下で一生懸命働いても年収300万円という人もいるというのが現実です。

では年収が高い低いというのは、どうやって決まるのでしょうか?結論をいいますと、8割は「業界」と「職種」によって決まります。私たちは、就いた業界・業種の中でどのように「どう戦うか」の前に、「どこで戦うか(どの業界・どの職種に就くか)」を正しく見極めることが重要になります。以降ではそれらに関してご説明いたします。

決定要因①:業界

それではなぜ、業界によって年収が決まるのでしょうか?単純に言えば、給与は会社の利益から払われるためです。当然ながら同じ仕事をしていても儲かっている業界の給与は高いが、儲かっていない業界では給与が低くならざるをえないということです。どのような業界でもビジネスの構造によって年収の水準が決定されてしまい、同じ業界内ではある程度のレンジに集約されていく傾向があります。以降で具体例についてみていきます。

業界別年収データ

業界の平均年収については、さまざまな情報があります。しかしながら、業界の区切り方、企業規模、年齢などの要素よって違いがあり、ずいぶん印象が違ってきますのでここでは複数の情報をご紹介します

国税庁「民間給与実態統計調査」(令和元年分)

民間給与実態統計調査によると、14の業界に分けた中で、年収の高い業界と低い業界は以下のようになっています。
・電気・ガス・熱供給・水道業 824万(平均比 約1.9倍)
・金融業・保険業       627万
・情報通信業         599万(平均比 約1.4倍)
・全体平均          436万
・サービス業         359万(平均比 約0.8倍)
・農林水産・鉱業       297万
・宿泊業・飲食サービス業   260万(平均比 0.6倍)

トップ3の業種は平均と比較して約1.4~1.9倍、一方ワースト3は平均と比較して約0.6倍~0.8倍となっています。また、トップとワーストでは約3倍となっており、かなり開きがあることがわかります。

平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】(2020年分)

また、転職・求人サイトのDODAの「平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】」によると、年収の高い業界と低い業界は以下のようになっています。
・メーカー   453万
・金融     448万
・総合商社   446万
・IT/通信   444万円
(中略)
・サービス    369万
・小売/外食   353万

情報ソースによって業種分類は異なりますが、どちらのデータにおいても金融、IT、メーカーは比較的年収が高く、一方、宿泊、小売/外食系は低いという傾向にあります。稼ぐという観点では、明確な意図(ノウハウを得て独立する等)がないのであれば、選択すべき業界はおのずと決まるといえるでしょう。

稼げる「業界」のキーワード:「成長」と「緩い競争」

いくつかのデータをみてきましたが、稼げる「業界」というのは何によって決まるのでしょうか?答えは単純で、「業界」自体が儲かっていることであり、そのような業界とは「成長している業界」であり、「競争が緩やかな業界」となります。

「プロダクト・ライフサイクル」という言葉をご存じでしょうか?マーケティングや経営に携わった方なら、必ずといってよいほど聞いたことがあるでしょう。
製品が初めて売り出されてから市場へ広がり、やがては時代遅れになって姿を消していく。その一連の流れのなかで、どんな製品も「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」の4つのステージをたどるという理論です。

この理論に関して、利益という観点でみますと、一般的には成長期後半から成熟期前半にかけてが業界としてもっとも稼げる時期となります。逆に成熟期もしくは衰退期に入ってしまった業界は競合企業の増加に伴う競争激化により利益が減っていくことになり、おのずと社員へ分配である給与も減っていくことになります。よって、仮に私たちが属している業界が成熟または衰退期に入っているのであれば、年収は比較的低くなることが想定されますので、業界を変えることも選択肢の一つとして言えます。

事例:デジタルカメラ業界

それでは事例としてデジタルカメラ業界を見てみましょう。デジタルカメラですが、2012年ごろから代替製品のスマートフォンにおされ、出荷数が激減、ライフサイクルとしては「衰退期」に入っています。

※http://www.cipa.jp/stats/documents/common/cr1000.pdf

実際に、デジタルカメラ業界の有力企業であるニコンの業績はここ数年で売上が約半分以下になり、営業利益も映像事業が足を引っ張り、2021年度には大幅赤字を見込んでいます。


※https://www.nikon.co.jp/ir/individual/finance/index.htm

そのような中、従業員の年収はどうなっているでしょうか?以下の情報から、2016年は778万円が2020年では824万円となんと平均年収が6%ほど上がっています。これはどういうからくりなのだろうと従業員数をみてみると2016年は5,564名に対して2020年は4,442名と約20%ほど減っているのです。この事例でもわかるように、成熟期にはいった企業は事業が縮小傾向となり、結果として従業員の給与を下げるまたはリストラをおこなうことによって生き残りを図っていることを意味します。

※NIKON平均年収 https://irbank.net/E02271/salary
※NIKON 従業員数

いかがでしたでしょうか?デジタルカメラ業界のほかに成熟または衰退産業として百貨店業界や外食産業があげられ、データによりますと軒並み低賃金での労働を強いられています。私たちは、自身がいる業界の成熟度(市場成長率など)を調べることによって、今後の年収の推移を予測できますので、ぜひ実施してみることをお勧めします。

決定要因②:職種

稼げる業界に身を置いたとしても、常に年収が高くなるわけではありません。私たちは、高い年収を目指すのであれば、もう1つの要素である「職種」を適切に選ぶ必要があります。以降でそれらについてみていきましょう。

職種別年収データ

職種の平均年収についてもさまざまな情報がありますが、ここでは業界別年収でも活用した転職・求人サイトDODAの情報を見てみましょう。

平均年収ランキング(職種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】(2020年分)

転職・求人サイトのDODA「平均年収ランキング(職種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】」によると、年収の高い職種と低い職種は以下のようになっています。
・専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人) 601万円
・企画/管理系                       516万円
・技術系(電気/電子/機械)                461万円
 (中略)
・事務/アシスタント系                    332万円
・販売/サービス系                      329万円

いわゆる専門職、技術職等の専門性が高い職業の平均年収は高く、一方、事務/アシスタント、販売/サービス系という比較的なりやすい職業の年収は低いという傾向にあります。

稼げる「職種」のキーワード:「希少性」と「専門性」

それでは稼げる「職種」は何によって決まるのでしょうか?一般的には「専門性」と「希少性」が大きくかかわってきます。

職種に関しても「業界」とおなじように「ライフサイクル」が存在します。すなわち、新たな職種が生まれて(導入期)、その職種に対するニーズが高っていく(成長期)。そして次第にその職種もコモディティ化していき(成熟期)、最終的には機械化等により消滅する(衰退期)という流れです。

人材価値(≒年収)という観点でみますと、一般的には導入期から成長期中盤にかけて、人材の「希少性」により価値が高まる傾向にあります。特に、職種の「専門性」が高い場合、人材需要が増加するにもかかわらず簡単にはその職種の人口が増えないため、さらに人材価値が高まることになります。一方、成長期後半もしくは成熟期に入ってしまうと、たとえ専門性が高くとも育成プログラム等が整備されることになるため、同じスキルを持った人材が増加し、結果として人材の希少性は薄れ、人材価値も低下することになります。よって、仮に自身の職種が飽和状態にあり、既にコモディティ化しているのであれば、次のキャリアを考える時期ともいえます。

まずは自分の市場価値を知ろう

いろいろと書きましたが、まずは自分自身の市場価値を知ることがスタートとなります。私は以下のようなサイトに登録しています。みなさんもまずは自分の価値を知ることから、次のステップを考えてみてはいかがでしょうか?

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まとめ

本記事では、サラリーマンから富裕層へのロードマップのSTEP1である収入アップの方法をご紹介しました。箇条書きでまとめると以下となります。

  • サラリーマンの年収はポジショニング(「業界」×「職種」)で8割決まる。「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」が重要
  • 稼げる「業界」とは「成長」しており、「競争が緩やか」な業界」
  • また、稼げる「職種」とは、「希少性」があり、「専門性」がある
  • 「業界」「職種」ともにライフサイクルがあり、時々刻々と状況が変わっている。常に自身が身を置く「業界」と「職種」の市場価値を見極めたうえで、成熟および衰退する前に次の「業界」「職種」へシフトすべき

以降の記事では、どのように市場価値を高めるために、次の「業界」「業種」へシフトするのかに関してご紹介します。