「学歴なんて関係ない」の真実 生涯収入差は2億
幼少期の「非認知能力」教育が投資リターンアップのカギ

「学歴なんて関係ない」の真実 生涯収入差は2億<br>幼少期の「非認知能力」教育が投資リターンアップのカギ

前回の記事では、人生における特に大きな支出として「教育費用」「住宅費用」「老後費用」「車関連費用」「保険費用」があり、「人生の5大支出」と呼ばれていることと、5大支出は約1.5億となり、総支出の67%を占めることをご紹介しました。

この記事では、5大支出の1つである「教育費用」について詳しく見ていきたいと思います。特に、世間でよく聞く「学歴なんて関係ない」は本当なのか否かを、投資対効果の面でみていきます。

子供の教育費用はいくら必要なのか?

子供の将来のために、充実した学習環境を整えてあげたい、志望大学に行かせてあげたい、海外留学させたいなど、子どもが小さいうちから進学および将来についてアレコレ考えるのが親というものです。

しかしながら、前回の記事で書いたように、教育費用は子供1人あたり1,000万円を超える金額となっています。以降では、子供の進路パターンによって、どの程度教育費用が必要となるのかみていきましょう。

すべて公立でも約1,000万円、すべて私立なら約2500万円必要

幼稚園から大学卒業までにかかる教育費の合計でいくらになるのでしょうか。下表に「すべて国公立文系」:幼稚園から大学まですべて公立、「一般的な進路」:幼稚園は私立、小・中・高校は国公立、大学は私立文系)、「すべて私立文系」:幼稚園から大学まですべて私立の3パターンで費用を試算しました。

出典)子ども1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)が減少(日本政策金融公庫)
出典)平成30年度子供の学習費調査の結果について(文部科学省)

大学まで進学した場合、教育費用が最も低いパターンである幼稚園から大学まですべて国公立を選択した場合であったとしても1,000万円以上が必要になります。一方、私立に通わせる場合はそこから約2~3倍の費用がかかることになります。

私立理系で+150万、私立薬系で+700万、私立医歯系で+2000万

先ほどの試算は、大学における進学をもっとも費用のかからない文系とした場合の費用でした。それではその他の学部を選んだ場合どうなるのでしょうか?同じ統計にもとづくと、.私立理系で+150万、私立薬系で+700万、私立医歯系で+2000万必要とのデータがあります。また、自宅から通わず、下宿となるとさらに4年間で約400万円以上必要とのデータもあります。

子供のためとはいえ、志望する進路によってはかなりの金額が必要となります。先立つものがないと、子供の希望にもこたえることができませんので、ライフプランを立てたうえで早期に教育資金の準備計画をたてる必要があるといえるでしょう。

「学歴なんて関係ない」は本当か?

ここまで教育費用がかなりの金額になることを見てきました。大学まで行った場合、すべて国公立へ通ったとしても1,000万円かかり、子供を2人,3人と欲しいと思った場合、その人数分が必要になります。
このような中、世の中には「もはや学歴社会ではない」「学歴なんて関係ない」という意見もあります。それが真実なのであれば、「教育費用は聖域」として家計見直しの対象としないのは理にかなっていないと言えます。以降では、学歴と年収に関係があるのか否かをみていきましょう。

「学歴なんて関係ない」の真実 中卒vs高卒vs大卒

厚生労働省の調査*によると、年齢と学歴別の平均年収は、下記の通りになります。年齢が上がるにつれて、年収に差が出ることが分かります。

出展:厚生労働省|賃金構造基本統計調査

これらのデータから、学歴別の生涯賃金を算出してきますとは、男性の場合は高卒で約2億2,000万円、大卒では2億7,000万円と約5千万円ほど違ってきます。
一方、女性の場合においても、高卒で約1億5,000万円、大卒で約2億1,000万円で、こちらも約5千万円ほど違ってくる計算となります。このような結果から、「学歴と生涯年収は関係している」といえます

「学歴なんて関係ない」の真実 有名大学編

高卒・大卒での生涯収入の差異はわかりましたが、では、大卒であっても有名大学とそれ以外では差があるのでしょうか?以降では出身大学の違いによる年収の差を見ていきましょう。

&CAREERのデータ*によると、大学別のトップ3は以下の大学となっています。
1位 東京大学(4億6126万円)
2位 慶應義塾大学(4億3983万円)
3位 京都大学(4億2548万円)

出展:https://andcareer.co.jp/lifetime-earnings/

教育の投資対効果アップのカギは幼少期の「非認知能力」

教育の投資対効果

高卒と大卒で生涯収入に5千万もの差があり、さらに有名大学になると2億以上の差があることを経済学的に捉えると、教育は株や債券よりも収益率の高い「投資」と考えることができます。

それでは、その投資の効果を高めたい場合、どのようにすればよいのでしょうか?教育費のデータからみた場合、年齢が上がるほど教育にお金と時間をかけがちですが、投資の視点で考えた場合、もっとも投資対効果が高いのは幼少期の教育といわれています。

投資対効果を上げるためには5歳までの”幼少期”が重要

1960年代、アメリカにおいて「ペリー就学前計画」という研究が行われました。3~4歳児に対し、質の高い幼児教育を行い、長期間にわたってその後の人生を追跡調査した結果、幼児期に教育を受けた人々は、教育を受けなかった人々に比べ、大学に入る率が高く、所得が高く経済的にも安定し、また犯罪を起こす確率が低いなど、顕著な差がみられました。

なぜこのような結果になるのでしょうか?こうした主張のオピニオン・リーダーであるノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン教授らは、「スキルがスキルをもたらす」、幼少期に適切な教育を受けることによって養われた学習意欲やスキルが、その後の学習を効率的にし、その後の人生にも大きく影響したと考えています。すなわち、就学前に十分なスキルを獲得しておけば、就学後の教育効果が大きくなる。よって、青年期に教育を施すより、幼児期に教育を受けさせたほうが、より少ないコストで教育の効果が期待できるとの考えです。

幼児教育で行うべきは「IQ」「学力」ではなく、「非認知能力」

それでは、幼少期から私たちは何を教育すればよいのでしょうか?読み書きや計算を教えた方がいいのでしょうか?

先ほどご紹介したペリー就学前計画において教育を受けた子どもたちのIQ(知能指数)は、6歳時点では教育を受けていない子どもたちより高くなりましたが、8歳前後でほとんどその差はなくなったとの調査結果が出ています。すなわち、記憶力や学力テストといった「認知能力」の早期教育は、その後の人生にあまり大きな影響がなかったと言えます。

では、私たちは何を伸ばすような教育をすればよいのでしょうか?同実験では、「非認知能力」であると述べています。いわゆるIQや学力テストで計測されるものが「認知能力」であり、「非認知能力」とは「好奇心」「協調性」「自己主張」「自己抑制」「がんばる力」など人間の気質や性格的な特徴を指すものです。より具体的に言うと、何かに好奇心を持ち集中して最後まで取り組む姿勢、自分の気持ちをコントロールできること、他者とうまくコミュニケーションできること、自分を大事に思えること、といった力のことです。数値で測りづらく、目に見えづらいものですが、将来の収入や学歴に大きく影響するのは、この「非認知能力」のほうだと述べています。

非認知能力を鍛えるには?

私たちは目に見えてわかる「認知能力」を重視しがちですが、子どもの「非認知能力」を伸ばすために、わたしたち親は何をしたらよいのでしょうか。

子供を愛し、丁寧に、やさしく、温かく育てること

当たり前のことですが、子供に愛を持って接することです。子どもはありのままの自分を温かく受け止めてくれる大人がいることで、自分の気持ちをコントロールして、自発的に物事に取り組むようになります。「自分は愛されている、大事にされている」ということを肌で感じ、「生きるって面白い!」「生まれてきて良かった!」と、親や周囲への安心感や信頼感、自己肯定感を育んでいきます。

夢中に遊ぶこと

もうひとつの重要な要素が「あそび」です。夢中であそんでいる子供たちは、自らが「考え」、こうしたらどうだろうという仮説を持って、自らが実行・失敗して「学ぶ」ということを常に実践しています。子どもの興味・関心、意欲などを大事にするあそびは非認知能力を育てるだけでなく、知的好奇心、つまり、認知能力にもつながります。非認知能力を育むことで、結果として認知能力も伸びていくのです。

まとめ

本記事では、5大支出の1つである「教育費」に関して考えてきました。箇条書きでまとめると以下となります。

・大学まで進学した場合、すべて公立でも約1,000万円、すべて私立なら約2500万円必要

・大卒の生涯収入は高卒より5千万多い。有名大学卒は大学平均より2億以上多い。よって、明らかに「学歴と年収は関係ある」。

・教育を行う場合、中学・高校などで塾に通わせるなどを行うよりも幼少期の「非認知能力」教育が効果的

・「非認知能力」とは「何かに好奇心を持ち集中して最後まで取り組む姿勢、自分の気持ちをコントロールできること、他者とうまくコミュニケーションできること」。育むためには「親の愛」と「遊び」が重要

以降の記事では、5大支出のうちの「住宅費用」に関して見直し・最適化に向けた方法をご紹介していきます。