安心の代償は2630万円
「保険費用」の最適化にむけてやるべきこと

安心の代償は2630万円<br>「保険費用」の最適化にむけてやるべきこと

前回の記事では、5大支出の1つである「住宅費用」についてよく話題に出る「賃貸vs購入論争」を詳しく見てきました。その中で、コストに関しては、支出額のみで考えると「賃貸」と「購入」で同だが、売却時の収支まで考えると「購入」が有利であること。マイホーム購入を不動産投資と同じ基準で精査・判断することが重要であることをご紹介しました。

この記事では、5大支出見直しの第三弾として、「保険費用」に関して詳しく見ていきたいと思います。私たちが何気なく入っている保険とは何のためにあるのか?と、保険に加入する前にまず考えるべきことをご紹介したいと思います。

生命保険は何のためにあるのか?

安心の代償は2630万円

私たちが生活していく中で、「交通事故」「病気で入院」「一家の働き手が死亡」等、発生すると経済的損失が大きく、生活設計に大きな影響を与えるリスク(=不幸)が存在します。実際に、交通事故は2019年には38万1,237件発生し、死亡事故は3,133件発生しています。

このような不幸に対する備えとして「保険」があります。たとえば、自分が死亡した場合、残された家族の生活で必要な支出を、公的保障・企業保障および資産以外で賄うためにあるのが「生命保険」になります。本来、このように、ライフプランに重大な影響を与えるリスクに対するヘッジ策として「保険」があるのですが、実際には、生命保険会社の営業職員に不安を煽られ、闇雲に加入しているケースが数多くみられます。

その結果として、日本人は保険に対して生涯で多大なお金を使っています。いわゆる5大支出の3番目に高い支出であり、平均でなんと2630万円も払っています(参考:5大支出は約1.5億、生涯支出の2/3 経済的自由に向けた家計見直しの秘訣)。仮に、保険が掛け捨てでなく、貯蓄性があるものであっても非常にリターンの悪い金融商品です。理由は明白で、生命保険会社の利益や従業員の給与、各種費用が引かれたうえで、私たちに分配されるからです。

リスクに備える3つの保障。「公的保障」「企業保障」「私的保障」

そもそも、私たちは日本の社会保障は手厚いことを認識すべきです。2019年度の日本の社会保障費は歳出の34.2%を占め、約33兆9914億円が支出されています。具体的には「公的保障」として「遺族年金」「公的医療保険」「障害年金」「老齢年金」「公的会議保険」等数多くの保証があります。また、企業によっては「企業保障」として、「死亡退職金」「弔慰金」「傷病見舞金」「退職一時金」「企業年金」などもあります。これらを認識したうえで、「私的保障」=保険を決めることで、過剰な安心感を得るための保険の払い過ぎを抑制することができます。

保険に対する向き合い方を変えるべき

以上から、私たちは保険に対する向き合い方を見直す必要があります。すなわち、保険会社の営業職員の言われるがままに不安に駆られて加入するのではなく、自らのライフスタイルとリスクを考え、各種制度を理解したうえで、保険に加入すべきです。具体的には以下ステップで考えるとよいでしょう。

どのようなリスクがあるのかを認識する

まず、自分のライフプランにおいて、自分に万が一のこと(=リスク)があった場合に「誰のために」「どんなお金(いつ、いくら)」が必要かを考えてましょう

「公的保障」「企業保障」で保障される範囲を理解する

それぞれのリスクに対して、まずは「公的保障」および「企業保障」でどこまで保障されるかを把握しましょう。それらで十分な保障があるにもかかわらず追加で「保険」に入るのは過剰です。

保険の商品を選ぶ

「公的保障」「企業保障」で賄えないものがある場合のみ「保険」への加入を考えます。その際、不安だからだとか、月々だと少額だからと必要以上に入るのではなく、必要最低限のものを選ぶようにしましょう。

ライフプランに合わせて見直す

保険は入って終わりではありません。私たちのライフスタイルは常に変化していきます。大きくは、結婚、出産などによって考えるべき要素が大きく変わりますので、イベントごとに見直すことを心がけましょう。

以上で概略を説明いたしました。以降でそれぞれのステップの詳細をご説明していきます。

まず己を知り、生命保険を知る

備えるべきリスクと必要なお金を知る

私たちが考えるべきリスクとしてどのようなものがあるでしょうか?生きていく中で様々なリスクがありますが、大きくわけると以下が挙げられます。
・「死亡」:遺族の今後の生活資金や本人の葬儀費用
・「病気やケガ」:病気やケガによる入院費や治療費、働けなくなった場合の生活資金
・「老後」:老後に必要となる生活資金
・「介護」:寝たきりや認知症になった場合の介護費用

必要な生活資金などは共働きか否か、子供の数などによって異なりますので、事前にライフプランを考えておくことで洗い出すことができます。また、万が一の場合のライフプランの見直し(教育費用を私立前提から公立前提へ変える等)も事前に考えておくこととおすすめします。

「公的保障」「企業保障」で保障される範囲を理解する

それぞれのリスクに対して、まずは「公的保障」「企業保障」の内容を調べましょう。具体的には、「死亡」に対する「公的保障」として「遺族年金」がありますし、「企業保障」として「死亡退職金」などがある企業もあります。「病気やケガ」に対しては「公的医療保険」「高額療養費制度」「傷病手当金」もあります。これらの内容を是非自分事として理解していき、国および会社の制度を最大限有効活用していきましょう。

保険の内容を理解する

「公的保障」「企業保障」で賄えない部分があるときにいよいよ登場するのが「保険」です。いわゆる「生命保険」と呼ばれる保険には、非常に多くのバリエーションがあります。それらを一覧にしてみると以下となります。

保険会社も色々考えた結果、多くの商品が生まれてきましたが、中には意味があるのか?疑問が残るものもあります。具体的には「学資保険」「年金保険」などです。例えば「学資保険」の中には、返戻率(=受け取る保険金の総額÷払い込んだ保険料の総額)が100%を切る商品もあります。子供のために貯蓄しているものが、全額返ってこないということで明らかに目的にあった商品になっていないケースもあります。このように、知らないうちに保険会社に貴重なお金を巻き取られないよう、金融リテラシーをつけ立ち向かいましょう。

ライフプランに合わせた保険の選び方・見直し方

私たちのライフステージ、人生のイベントによって、考慮すべきリスクと必要となる保障額は変化します。例えば、結婚すれば配偶者の生活のことを考える必要が出ますし、子供ができると子供の生活費も考える必要が出てきます。以下で、主なライフイベント毎のポイントを整理しておりますので、是非参考にしてみてください。

まとめ

本記事では、5大支出の1つである「保険費用」に関して考えてきました。箇条書きでまとめると以下となります。

・保険費用として私たちは約2630万円ものお金を生涯払っているが、保険会社の営業職員の言われるがままに不安に駆られて加入しているケースあり。

・自らのライフスタイルとリスクを考え、各種制度(「公的保障」「企業保障」)を理解したうえで、不足分を補うために保険に加入すべき。

・人生のライフイベントにともなって、保険内容をみなおすべき

保険は何かあったときは私たちを助けてくれる非常にありがたいものですが、だからといって無尽蔵に保険に加入し、日々の生活を苦しくするのは得策ではありません。ぜひ、この記事を参考にして、「保険費用」最適化の参考にしていただければとおもいます。