異文化理解のモデル「7 dimensions of culture」
(3)関与特定的 vs 関与拡散的

異文化理解のモデル「7 dimensions of culture」<br>(3)関与特定的 vs 関与拡散的

本記事では、異文化理解のための有効なモデルである「7dimensions of culture」の3番目の次元である「関与特定的」と「関与拡散的」に関してご紹介します。
※以降では、「特定的」「拡散的」と表現します

Specific(特定的) vs diffuse(拡散的)

みなさんは、職場の上司や同僚と、職場以外ではどのような関係性・距離感を保っていますか?仕事は仕事、プライベートはプライベートとキッパリ別けて扱う人、ビジネスの上下関係や肩書きを仕事の場に限定する人もいれば、仕事帰りに一緒に飲みに行ったり、休日も一緒にゴルフをしたりサッカーしたりと、ビジネスでの関係性を仕事以外の私生活にも持ち込む人もいます。この指向を理解しないままですと、人間関係・距離感といった観点において、かならずコンフリクトが発生します。それを予見し、対策するためにも、7 dimensions of cultureの3つ目の次元である「特定的」と「拡散的」の把握が非常に役立ちます。

特定的とは

Specificは「特定の」「明確な」などと一般的に訳されます。この「特定」を辞書でひくと、「特にそれと指定すること。また、特にそれと定まっていること。」と書かれています。

特定的文化では、人間関係は出会った分野に特定されます。仕事上の仲間は仕事での関係だけ、趣味の仲間は趣味での関係だけ、子供の学校の仲間は子供の関係だけ、というようにです。よって、特定的文化では、人々は仕事と私生活を分けて考えます。人間関係は仕事の達成にはあまり影響を与えないと信じており、良好な人間関係は重要ですが、良好な人間関係がなくても一緒に働くことができると信じています。また、友好的な人間関係はすぐに構築できますが、仕事が達成されると関係性がその場で終了することになります。

拡散的

diffuseは「広がった」「拡散した」と一般的に訳されます。「拡散した」を辞書でひくと、「広がり、散らばること」と書かれています。アロマディフューザーや、照明機材や空調機器でもディフューザーという言葉が使われるのでみなさんイメージが付くのではないかと思います。

このような社会では、人間関係は出会った分野以外にも広がります。仕事上の仲間は仕事での関係だけ、趣味の仲間は趣味での関係だけといったものではなく、一緒に仕事をすると、仕事だけの関係だけでなくプライベートでも付き合う事が多くなります。

よって、拡散的文化では、人々は自分のプライベートな生活と仕事の生活が相互に関連していると見なす傾向があり、関係が強いときに目的を達成できると信じています。このように、これらの文化では、仕事の同僚は仕事の外でお互いに交流します。これらの文化は礼儀正しく、年齢、地位、背景をより尊重する傾向があります。

また、一度友達になるとプライベートな部分も多く人と共有する事になる為、人々は出会いには慎重になり、人間関係を築くのに多くの時間と忍耐が必要になる場合がありますが、ビジネスパートナーが生涯の友達になることは珍しいことではありません

日本はどっち?

それでは、わたしたち日本人は、特定的なのか拡散的なのかどちらなんでしょうか?それを判断するための面白い例があるのでご紹介します。

例えば、あなたの上司が、「わたしの家のペンキ塗りを手伝ってくれないか?」と頼んできたとします。あなたならどうするでしょうか?特定的文化の人であれば、「気が進まなければ家を塗る必要はありません。彼は会社の上司ですが、社外では、彼には何の権限がありません。」と答えます。一方、拡散的文化の人であれば、「たとえやりたいと感じていなくても、とにかく家のペンキ塗りを手伝います。なぜなら彼は私の上司であり、仕事以外でも無視することはできないからです。」と答えることになります。手伝わない(=特定的)と答えた各国の比率を表したグラフが以下となります

みてのとおり、日本人は特定的と拡散的の間に属しており、典型的な特定的文化の国は、スウェーデンやオランダ、デンマーク、イギリス、カナダ、米国、オーストラリアなどアングロサクソン諸国、北欧諸国などとなります。一方、拡散的文化には、中国、クウェート、ベネゼエラ、シンガポールなどとなります。どうでしょうか?みなさんのイメージと一致しましたでしょうか?

ビジネスコミュニケーションにおける特徴とヒント

「特定的」「拡散的」それぞれの特徴をご紹介しましたが、両者の違いから、特定指向の人々を付き合いが悪いと見なしたり、拡散指向の人々を時間の浪費家と見なしたりする人もいます。よって、これらの文化的な認識の不足は、特に欧米とアジア諸国での仕事の進め方、プライベート含めて距離感の置き方において特に影響をあたえることになります。以降では、お互いに価値観の異なる人々との異文化理解、異文化コミュニケーンにおいて気を付けるべきことをご紹介します。

特定的文化でのビジネスにおける特徴とヒント

■特徴

  • 人々は仕事とプライベートを別に、職場でのポジションを他の人生から分離しようとします
  • 仕事に直接関連するスキルのみが重要であり、評価されます
  • 業績はパフォーマンスによって評価されます
  • 一見オープンに見えます

■Tips

  • 人々が仕事と家庭生活を別々に保つことを許可しましょう
  • 人間関係を強化することに集中する前に、目的/目標に焦点を合わせましょう
  • 会議の議題と、時間割を明確した会議を設定しましょう

■注意事項

  • 議論されている問題に関係のないタイトルを使用したり、スキルを誇示しないでください

拡散的文化でのビジネスにおける特徴とヒント

■特徴

  • 仕事とプライベートが相互に浸透しており、仕事や職場においてもプライベートについて話し合います
  • 仕事に関連するスキルに加えて、人間関係が重要視されます。
  • 会議が時々脱線してしまいがちです
  • 転職や、M&Aなどは少ない傾向があります
  • はじめはとっつきにくく、冷たくみえますが、一度仲良くなるとその関係は長く続きます

■Tips

  • 仕事をはじめる前に、良い関係を築くことに焦点を合わせましょう
  • 一緒に働いている人々と組織についてできる限り多くを調べましょう
  • 職場で個人的な話し合いをする機会をもうけてください
  • 会議が脱線したとしても、押し付けるのではなく、傾聴し議題を元に戻すような、曲がりくねった会議をしましょう
  • イベントへの招待を断らないようにしましょう

■注意事項

  • 仕事とは関係がない、肩書き、年齢、背景のつながりなども尊重する必要があります

事例

以降で、わたしおよび周囲のメンバーが経験した異文化コミュニケーションの事例をご紹介します。

具体例① ~中国企業との新規ビジネス~

中国にある企業とビジネスした際のことです。ものづくりの外注先としてとある中国企業を選定し、現地調査のために初めて訪問したときのことです。我々は役員から指定された新規ビジネス立ち上げの納期に追われていたため、挨拶も簡単にすませ、スモークトークもほどほどに具体的な話に入りました。が、はじめはにっこりとほほ笑んで迎えてくれた相手方もそのころには険しい顔に。

その後、仕事の話はすませ、中国企業の方が用意してくれた宴席に行く予定だったのですが、急遽、日本から別件の仕事の指示が入り、宴席をキャンセルしてしまいました。その結果、中国企業の方は非常に怒り、翌日からの会議は全部中止、仕事の話も白紙になってしまいました。

当時は、納期に追われ矢継ぎ早に仕事の話をし、宴席もキャンセルして失礼なことしたけど、そんなに怒ることかなぁと思っていました。しかしながら、まずは人間関係の構築がビジネスの前提となる文化において、自己紹介もほどほど、宴席もドタキャンと非常に失礼なことをしていたんだなと反省しました。まさに異文化理解の不足から発生した出来事だと思います。

具体例② ~ドイツ人の上司~

私の知人の話です。彼は入社後アライアンス部門に配属されました。彼はドイツ人上司との人間関係を構築しようと、オープンかつフレンドリーに接し、スモールトークとして自身の家族の話や週末どう過ごしたのか?などを積極的に話しかけたのですが、「ここは仕事場だ、プライベートの話をする場所ではない」と、バッサリと切り捨てられたとのこと。彼は、初めての外国人の上司だったので、アメリカのTVドラマをたくさんみて関係性構築のやり方を勉強したんだけどうまくいかなかったといっていました。

欧米人を1つのステレオタイプとしてみて取り扱った結果であり、それぞれの国、それぞれの個人を理解したうえでコミュニケーションスタイルを変えるべきいい事例なのではないかとおもいます。まさに、異文化コミュニケーションの必要性を痛感した出来事でした。

まとめ

本記事では、7dimensions of cultureの1つの次元である「特定的」「拡散的」の特徴と異文化理解、異文化コミュニケーションにおけるヒントに関してみてきました。その中で、国際的な文化の違いの2つの事例をご紹介しましたが、これらの文化の違いは、日本企業間や日本人同士でも起こることです。たとえば、年配の人々は比較的拡散的になり、飲みにケーションや社員旅行・休日ゴルフに積極的ですが、若者は特定的で、飲み会は行かない、定時後・休日はプライベート最優先というようにです。ぜひ、自分自身や同僚についても分析してみてはいかがでしょうか?きっと、その人々との付き合い方・距離感の保ち方の理解に向けたヒントを得ることができるはずです。

異文化理解に関して詳しく知りたい方は、以下の書籍などを参考にするとよいと思います。ご参考まで

また、コミュニケーションの基礎となる英語を学びながら、様々な文化、そして戦略立案やマーケティングといったビジネスにおいて必須の知識を学べるオンライン英会話スクールがあるので、よかったら試してみてください。