異文化理解のモデル「7 dimensions of culture」
(5)業績主義 vs 帰属主義
- 2021.02.23
- 2022.01.20
- 異文化理解
- ダイバーシティ, 異文化コミュニケーション, 異文化理解

本記事では、異文化理解のための有効なモデルである「7dimensions of culture」の5番目の次元である「業績主義」と「帰属主義」に関してご紹介します。
Achievement(業績) vs Ascription(帰属)
みなさんの社会的評価は何によって決まります?受注額や利益額、新製品発表数、新規ユーザ獲得数といったような業績や成果によって評価される場合がある一方、年齢、性別、家柄、階級、学歴といったいわゆる属性によって評価される場合もあります。
この指向を理解しないままですと、不当に評価されている・失礼な対応をしているといった不満やコンフリクトが必ず発生します。それを予見し、対策するためにも、7 dimensions of cultureの5つ目の次元である「業績主義」と「帰属主義」の把握が非常に役立ちます。
業績主義とは
Achievementは「業績」と一般的に訳されます。この「業績」を辞書でひくと、「事業や学術研究の上で獲得した成果」と書かれています。
業績主義の文化では、あなたが何者なのかや属性とは関係なしに、達成したこと、すなわち成果を通じてステータスを獲得します。したがって、その人の実績、獲得した賞、そしてユニークな業績は高く評価されます。このような文化においては、才能のある若者が業績を上げ、年長者を上回っているのを見るのは珍しくありません。また、論理的な議論であれば、誰でも決定に異議を唱えることができます。
帰属主義とは
Ascriptionは「帰属」と一般的に訳されます。この「帰属」を辞書でひくと、「特定の組織体などに所属し従うこと」と書かれています。
帰属主義の文化では、あなたが誰であるかに基づいてステータスを与えられます。したがって、権力、肩書き、地位が重要であり、年齢、性別、家族、大学、社会的つながりなどが含まれます。このような文化においては、能力ではなく、組織へのコミットメントによって尊敬を得ることになります。また、意思決定は最も高いステータスを持つ人によってなされ、それに対する異論・異議は、より高い権限を持つ誰かによってのみ唱えられます。
日本はどっち?
それでは、わたしたち日本人は、業績主義なのか帰属主義なのかどちらなんでしょうか?それを判断するためには、次の質問を世界の各国の人々に行ったデータを紹介します。
- 質問1:人生で最も重要なことは、たとえ物事を成し遂げなくても、最も適した方法で考え、行動することですか?
- 質問2:あなたが得る尊敬は、家族の背景に大きく依存していますか?
まず、質問1に対して同意できないと答えた人の割合、すなわち、重要なことは成し遂げること(=業績主義)と答えた各国の比率を表したグラフが以下となります。日本人はスコアは26と低めである一方、アメリカ、カナダ、オーストラリア、北欧が上位をしめています。

次の質問2に対して同意できないと答えた人の割合、すなわち、家族の背景に依存しない(≠帰属主義)と答えた各国の比率を表したグラフが以下となります。日本は79とほぼ平均といったところでしょうか。やはり、北欧や、アメリカなどが上位をしめています。

一般的に、プロテスタント系の文化圏に属する人々は業績主義の割合が高く、カトリック系・仏教・ヒンズー教の文化圏に属する人々は帰属主義の割合が高いといわれているようです。
ビジネスコミュニケーションにおける特徴とヒント
「業績主義」「帰属主義」それぞれの特徴をご紹介しましたが、これらの評価の違いや議論における自由度の違いはコンフリクトを招く可能性があります。
両者の違いから、業績主義な人々を「失礼である」と判断したり、帰属主義な人々を「縁故主義者、不公平」とみなす人もいます。よって、これらの文化的な認識の違いは、日々のコミュニケーションにおいて影響をあたえることになります。以降では、互いに価値観の異なる人々との異文化理解、異文化コミュニケーンにおいて気を付けるべきことをご紹介します。
業績主義でのビジネスにおける特徴とヒント
■特徴
- 達成したこと、すなわち成果を通じてステータスを獲得します。
- 業績を上げた若者が、年長者より上のステータスを持つケースは珍しくありません。
- 論理的な議論であれば、誰でも決定に異議を唱えることができます。
- テクニカルスキルが重要視されます
■Tips
- 個人の業績に報いましょう。良い業績に報い、適切に認めましょう。
■注意事項
- タイトルを使いたがりません。関連する場合にのみタイトルを使用してください。
帰属主義文化でのビジネスにおける特徴とヒント
■特徴
- あなたが誰であるかに基づいてステータスを与えられます (年齢、性別、家族、大学、社会的つながりなど)
- 権力、肩書き、地位が重要であり。それらを使いたがります
- 異論・異議は、より高い権限を持つ誰かによってのみ唱えられます
- 政治的スキル、組織での影響力が重要視されます
■Tips
- 上司やステータスが上の人々に対して敬意を払いましょう
■注意事項
- 決定に異議を唱えるときは、権威のある人々に敬意を表してください。
- 上司の決定に異議を唱えたい場合は、慎重におこなってください。
事例
以降で、わたしおよび周囲のメンバーが経験した異文化コミュニケーションの事例をご紹介します。
具体例① ~タイのローカルマネージャーとの人間関係~
私の同僚の話です。彼はタイの子会社へダイレクターとして赴任することになりました。初めはローカルスタッフともうまくいっていたのですが、次第にローカルマネージャーとの関係が悪くなっていったそうです。
タイ人のローカルマネージャが短期目標のみを目標とする一方、日本人の彼は長期目標も重視した点でコンフリクトがあったり、部下の前でローカルマネージャを非難した点がタイ人には信じがたかったり色々あったようですが、一番のポイントは、この帰属主義に関することだったようです。
具体的には、タイ人の彼はMBAを取得し、名家の出であることを誇りにしていたようですが、日本人の同僚はそれらはまったく気にせず、成果のみを重視していたようです(日本から強いプレッシャーがあったのも一因のようです)
タイ人の彼は、長年勤めており会社や仕事を楽しんでいたようですが、日本人上司との関係性が悪化し、さらには競合他社から魅力的なオファー受け、彼自身のステータス(MBA,名家の出など)を認め、尊敬してもらえたことから最終的には競合他社へ移ることになってしまいました。まさに、異文化理解の不足が発端となって起こった悲劇だと思っています。
まとめ
本記事では、7dimensions of cultureの1つの次元である「業績主義」「帰属主義」の特徴と異文化理解、異文化コミュニケーションにおけるヒントに関してみてきました。その中で、国際的な文化の違いの1つの事例をご紹介しましたが、これらの文化の違いは、日本企業間や日本人同士でも起こることです。たとえば、官公庁や従来型の日本企業においてはいまだに学閥、男性優位といったことが残っていると聞きます。ぜひ、自分自身や同僚、顧客や取引先についても分析してみてはいかがでしょうか?きっと、その人々とのコミュニケーションの取り方の改善に向けたヒントを得ることができるはずです。
異文化理解に関して詳しく知りたい方は、以下の書籍などを参考にするとよいと思います。ご参考まで
また、コミュニケーションの基礎となる英語を学びながら、様々な文化、そして戦略立案やマーケティングといったビジネスにおいて必須の知識を学べるオンライン英会話スクールがあるので、よかったら試してみてください。

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