異文化理解のモデル「7 dimensions of culture」
(7)内部志向 vs 外部志向
- 2021.02.27
- 2022.01.20
- 異文化理解
- ダイバーシティ, 異文化コミュニケーション, 異文化理解

本記事では、異文化理解のための有効なモデルである「7dimensions of culture」の最後の7番目の次元である「内部志向」と「外部志向」に関してご紹介します。
Internal direction(内部志向) vs outer direction(外部志向)
私たち人類は誕生以来、自然と関わり合いながら生きてきました。時には、大雨・日照り・台風・地震や雷といった天災に翻弄され続けてきた一方で、自然の摂理を解明し、理解・予測して、自然や周囲の環境をコントロールしようと努力してきました。その中で、自身の目的・目標を達成するために自然や環境をコントロールできると考える人もいれば、コントロールできない・環境に合わせて自らがかわる必要があると考える人もいます。
この志向を理解しないままですと、相手を利己的・対立を好むとみなす場合がある一方、物事に向き合わない・対立から逃げると感じる人もいて、お互いに対して不満を持ち、コンフリクトが発生することになります。これらの文化の違いを理解し、うまくコミュニケーションするためにも、7 dimensions of cultureの7つ目の次元である「内部志向」と「外部志向」の把握が非常に役立ちます。
内部志向とは
Internal directionは「内部志向」などと一般的に訳されます。この「内部」を辞書でひくと、「物の内側の部分。組織などに属する範囲内」と書かれています。
内向きの文化の人々は、自分の目標を達成するために自然や自分の環境を制御できると信じています。結果、彼らは利己的かつ攻撃的な傾向があり、勝利を第一と考えます。また、自然の法則を理解して管理するために莫大な金額を投資し、数多くの発明や特許を生み出す傾向があります。
外部志向とは
outer directionは「外部志向」などと一般的に訳されます。この「外部」を辞書でひくと、「物の外側。外から見えるところ。」「その組織に関係のない人。部外者」などと書かれています。
外向志向の文化の人々は、自然や環境・運命を支配することはないと信じており、彼らは目標を達成するために彼らの周囲・環境に合わせて自分のアプローチを適応させ、協力することが必要であると考えています。職場や人間関係においては、可能な限り対立を避ける傾向があり、何が何でも勝利を勝ち取ることいったことを重要視しません。また、何か新しいものを生み出すというよりも、既存の技術を利用して、より洗練された人気のある製品を作成することに長けている傾向があります。
日本はどっち?
それでは、わたしたち日本人は、内部志向なのか外部志向なのかどちらなんでしょうか?それを表すデータがありますのでご紹介します。

グラフをみてみますと、日本人はちょうど中間のようです。確かに、日本人は対立を避けたり、既存の技術を利用して洗練したものを作るのに長けている一方、自然法則や真理を追究することにも積極的なようにお思えます。また、典型的な内部志向文化の国は、北欧、アメリカ、イギリスなどになります。一方、典型的な外部志向な文化の国は、ロシア、中国などとなります。
ビジネスコミュニケーションにおける特徴とヒント
「内部志向」「外部志向」それぞれの特徴をご紹介しましたが、これらの周囲との関係性の感覚や考え方の違いは様々な場面でコンフリクトを招く可能性があります。両者の違いから、内部志向な人々を「利己的」「攻撃的」と判断したり、外部志向な人々を「逃げ腰」「真摯に向き合わない」とみなす人もいます。よって、これらの文化的な認識の違いは、日々のコミュニケーションにおいて影響をあたえることになります。以降では、お互いに価値観の異なる人々との異文化理解、異文化コミュニケーンにおいて気を付けるべきことをご紹介します
内部志向文化でのビジネスにおける特徴とヒント
■特徴
- 自分の目標を達成するために周囲をコントロールしようとします
- 勝利第一のため、利己的かつ攻撃的な一面があります
- 莫大な金額を投資し、数多くの発明や特許を生み出す傾向があります
■Tips
- 人々が自らスキルを磨き、学習する機会をあたえましょう
- 人々が同意する明確な目的・目標を設定し、合意してもらいましょう
- 目標と報酬が明確にリンクするようにしましょう
- 意見の不一致や対立について率直に話し合う場を設定しましょう
■注意事項
- ある程度の建設的な批判を許してください
外部志向文化でのビジネスにおける特徴とヒント
■特徴
- 勝利する、目標を達成するといったことに固執しない傾向があります
- 職場や人間関係においては、可能な限り対立を避ける傾向があります
- 環境に合わせて自分のアプローチを適応、変化させ、周囲と協力することをこのみます
- 既存の技術を利用して、より洗練されたものを作成することに長けている傾向があります。
■Tips
- 仕事に責任を持つよう、自分の能力に自信を持つよう動機づけしましょう
- ストレスのもととなるコンフリクトはを迅速かつ静かに対処しましょう
- 定期的なフィードバックし、自身の行動による周囲への影響、周囲との関係性を正しく理解してもらい、軌道修正を促しましょう
事例
以降で、わたしおよび周囲のメンバーが経験した、異文化コミュニケーションの事例をご紹介します。
具体例① ~フランス企業との交渉~
私の弟が勤務する会社の経営者がフランス人となり、取引先もフランス企業になり彼が交渉担当となった時のことです。弟は、新製品の大型受注獲得に向けて提案を練り、価格もリーズナブル、
その他のオプション(物流費、教育費、メンテナンス費)なども込みのお互いにとってお得なプランを作り上げたそうです。これなら相手も受け入れるだろうと思って、交渉に臨んだのですが、合意できなかったとのこと。その後、なんどか条件交渉を繰り返し、お互いにwin-winな関係を弟は模索したのですが、結局相手先は、自分の主張をかえず、自分が有利な条件を提示し続け、結局、契約合意には至らなかったようです。彼は、フランス人の議論好きの性格と、フランス人と日本人の「内部志向」と「外部志向」の違いが原因かなとこぼしていました。
まとめ
本記事では、7dimensions of cultureの1つの次元である「内部志向」「外部志向」の特徴と異文化理解、異文化コミュニケーションにおけるヒントに関してみてきました。その中で、国際的な文化の違いの1つの事例をご紹介しましたが、これらの文化の違いは、日本企業間や日本人同士でも起こることです。たとえば、創業者が経営している企業や何か強い技術を持っている企業は自己が目指す明確なビジョン・戦略に基づいて経営されている一方、サラリーマン経営者の場合は、外部からの様々な声に翻弄されながら経営されているように見えます。ぜひ、自分自身や同僚、顧客や取引先についても分析してみてはいかがでしょうか?きっと、その人々とのコミュニケーションの取り方の改善に向けたヒントを得ることができるはずです。
異文化理解に関して詳しく知りたい方は、以下の書籍などを参考にするとよいと思います。ご参考まで
また、コミュニケーションの基礎となる英語を学びながら、様々な文化、そして戦略立案やマーケティングといったビジネスにおいて必須の知識を学べるオンライン英会話スクールがあるので、よかったら試してみてください。

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