異文化理解のモデル「7 dimensions of culture」
(6)順次的 vs 同期的

異文化理解のモデル「7 dimensions of culture」<br>(6)順次的 vs 同期的

本記事では、異文化理解のための有効なモデルである「7dimensions of culture」の6番目の次元である「順次的」と「同期的」に関してご紹介します。

Sequential time(順次的) vs Synchronous time(同期的)

時間は、すべての文化・社会に属する人々にとって平等に与えられるものですが、時間のとらえ方は人それぞれによって異なります。時間に対して厳しく・柔軟性がなく、会議等もスケジュール通りに進行させることを好む人もいれば、時間に対して柔軟で、スケジュール変更を簡単に許容する人もいます。この指向を理解しないままですと、時間にいい加減と思う人もいれば、融通が利かないと思う人もいて、お互いに対して不満を持ち、コンフリクトが発生することになります。これらの文化の違いを理解し、うまくコミュニケーションするためにも、7 dimensions of cultureの6つ目の次元である「順次的」と「同期的」の把握が非常に役立ちます。

順次的とは

Sequentialは「順次的な、一連の、順々に起きる」などと一般的に訳されます。この「順次」を辞書でひくと、「順序に従って物事をするさま。順々。順繰り」と書かれています。

順次的な文化では、時は金なりです。効率を最大化するために、時間厳守を好み、厳密に編成されたスケジュールに従い、固執する傾向があります。会議に遅れることは失礼であり、スケジュールを遅らす人々を高く評価しない傾向があります。また、1度に1つのことのみに集中することを好み、短期的な目標に重点が置かれます。

同期的とは

Synchronousは「同期」「同時に起こる」などと一般的に訳されます。この「同期」を辞書でひくと、「作動の時間を一致させること。内容や情報を一致させること」と書かれています。

同期時間文化では、人々は時間に関して柔軟に行動します。目標は明確に設定されますが、スケジュールははるかに緩い傾向があります。人々は過去、現在、そして未来を織り交ぜた時代として見ているため、一度に複数のプロジェクトやタスクに取り組むことがあります。また、短期的な目標よりも長期的な目標に重点をおきます。

日本はどっち?

それでは、わたしたち日本人は、順次的なのか同期的なのかどちらなんでしょうか?それを表すデータがありますのでご紹介します。

グラフをみてみますと、日本人はちょうど中間のようです。確かに、日本人は時間に厳しい一方、長期的なものの見方もする傾向があり、双方の特性を有しているように思えます。また、典型的な順次的文化の国は、ドイツ、アメリカ、イギリスなどになります。一方、典型的な同期的な文化の国は、メキシコ、ブラジルなどとなります。

ビジネスコミュニケーションにおける特徴とヒント

「順次的」「同期的」それぞれの特徴をご紹介しましたが、これらの時間に対する感覚や考え方の違いはコンフリクトを招く可能性があります。両者の違いから、順次的な人々を「時間に厳しすぎる」「融通が利かない」「短期的」と判断したり、同期的な人々を「時間にルーズ」「失礼」「信頼できない」とみなす人もいます。よって、これらの文化的な認識の違いは、日々のコミュニケーションにおいて影響をあたえることになります。以降では、お互いに価値観の異なる人々との異文化理解、異文化コミュニケーンにおいて気を付けるべきことをご紹介します。

順次的な文化でのビジネスにおける特徴とヒント

■特徴

  • 時間に対して正確です。そのため、遅刻/遅れに対して厳しい傾向があります
  • 会議は明確な目的と議題が設定され、スケジュール通りに進行されます
  • 一度に1つのプロジェクトやタスクに集中します
  • 短期的な目標を好みます

■Tips

  • 明確な期限を設定しましょう
  • 設定したスケジュール、期限から外れないようにしましょう

■注意事項

  • 非常にタイトにスケジュールする傾向があります

同期的な文化でのビジネスにおける特徴とヒント

■特徴

  • 時間に対して柔軟(ルーズ)です。会議等に遅れるケースがしばしばあります。
  • 会議はしばしばスケジュール通りに進まず、脱線しながらすすみます
  • 複数のプロジェクトやタスクを同時に取り組む傾向があります
  • 長期的な目標を好みます

■Tips

  • スケジュール内で人々にある程度の自律性を与えましょう
  • 絶対に守る必要がある期限がある場合、明確に伝えましょう

■注意事項

  • (遅れることを考慮した)余裕をもったスケジュールを計画しましょう

事例

以降で、わたしおよび周囲のメンバーが経験した、異文化コミュニケーションの事例をご紹介します。

具体例① ~メキシコ新工場の立ち上げ~

とある自動車部品メーカーのシステム導入プロジェクトを支援した際のことです。メキシコに生産拠点を設けることとなり、それにともないシステムを導入する事になりました。プロジェクトは顧客である自動車メーカーの新拠点設立に合わせたスケジュールとなっており、明確な納期が決まっていたのですが、メキシコ側メンバーとの価値観のずれによりうまく進まない状態がつづいており、日本側代表者とメキシコ側代表者間の関係は険悪なものとなっていました。

この状況を打開するために両者からヒアリングした結果は次のようなものでした。まず日本側の主張ですが、メキシコ側のメンバーは会議にはいつも遅れたり、会議の最中に関係ない話題の話をしたり、おしゃべりをしたりと、納期を間に合わせようとする意思がまったく感じられない。このプロジェクトが一番重要なはずなのに、複数のプロジェクトを掛け持ちしている。といったものでした。一方、メキシコ側メンバーの主張は、スケジュールがきつ過ぎる、会議も定型的すぎる。自由がない。といったものでした。まさに、「順次的」な人々と、「同期的」な人々との間での異文化コミュニケーションにおけるコンフリクトだとおもいます。

その後は、双方の考え方を共有し、異文化理解を進める努力をしました。そして、メキシコ側にある程度の自由度・自律性を与える一方、今回の納期は遅れることはできない、それはメキシコ工場の存在意義にもかかわると、重要度を再認識させることで、何とか工場設立・システム導入の納期までに間に合わせることができました。

具体例② ~ドイツ人の上司2~

ドイツ人上司の部下となった私の知人の話です。上司との1on1があり、3年後の目標などを知人からはなしたのですが、ドイツ人上司からは、3年後の話なんて話しても意味がないと一蹴されてしまったそうです。日本人上司との1on1では、長期的な目標や育成プラン、アサイン計画なども話していたので当然そんな話もするだろうと思っていたので、びっくりしたとのこと。「長期的視点」「短期的視点」といった観点での違いが表れた異文化コミュニケーションの例ではないかと思います

まとめ

本記事では、7dimensions of cultureの1つの次元である「順次的」「同期的」の特徴と異文化理解、異文化コミュニケーションにおけるヒントに関してみてきました。その中で、国際的な文化の違いの2つの事例をご紹介しましたが、これらの文化の違いは、日本企業間や日本人同士でも起こることです。たとえば、スケジュール通りにきちきちと物事を1つずつこなしていくスペシャリスト的な人がいる一方、複数のプロジェクトを掛け持ちしながら進めていくプロデューサー的な人もいます。ぜひ、自分自身や同僚、顧客や取引先についても分析してみてはいかがでしょうか?きっと、その人々とのコミュニケーションの取り方の改善に向けたヒントを得ることができるはずです。

異文化理解に関して詳しく知りたい方は、以下の書籍などを参考にするとよいと思います。ご参考まで

また、コミュニケーションの基礎となる英語を学びながら、様々な文化、そして戦略立案やマーケティングといったビジネスにおいて必須の知識を学べるオンライン英会話スクールがあるので、よかったら試してみてください。