異文化理解のモデル「7 dimensions of culture」
(4)中立的 vs 感情的
- 2021.02.22
- 2022.01.20
- 異文化理解
- ダイバーシティ, 異文化コミュニケーション, 異文化理解
本記事では、異文化理解のための有効なモデルである「7dimensions of culture」の4番目の次元である「中立的」と「感情的」に関してご紹介します。
Neutral(中立的) vs Affective/emotional(感情的)
みなさんは、感情をどれほど率直に表現するでしょうか?大きな受注をとったときも、品質問題や納期遅延がおこった際もポーカーフェイスで全く感情を表に出さない人や、会議等で自分の考えを全く出さない人もいれば、普段から感情や自分の意見を自由に表す人々もいます。この指向を理解しないままですと、相手をプロフェッショナルではないととらえたり、情熱・やる気がないととらえたりしてかならずコンフリクトが発生します。それを予見し、対策するためにも、7 dimensions of cultureの4つ目の次元である「中立的」と「感情的」の把握が非常に役立ちます。
中立的とは
Neutralは「中立の」と一般的に訳されます。この「中立」を辞書でひくと、「対立するどちらの側にも味方しないこと。また、特定の思想や立場をとらず中間に立つこと」と書かれています。
中立的な文化では、人々は自分の感情を自制し、共有しない傾向があります。感情はもちろん感じていますが、それらは抑制され、コントロールされています。そして、自制心と感情の抑制はクールで合理的かつプロフェッショナルであると考えられています。このため、人々は最小限のジェスチャーで柔らかな口調でコミュニケーションをとるため、何を考えているのか、どのように感じているのかを読み取ることは難しい傾向があります。
拡散的とは
affective,emotionalともに「感情の」「感情を持つ」「感情を表現した」などと一般的に訳されます。この「感情」を辞書でひくと、「物事に感じて起こる気持ち。外界の刺激の感覚や観念によって引き起こされる、ある対象に対する態度や価値づけ。快・不快、好き・嫌い、恐怖、怒りなど。」と書かれています。
感情的な文化の人々は、幼い頃から、ジェスチャー、音色の変化、顔の反応を使用して、自分の心にあることを表現するように促されてきました。そのため、人々は職場でも感情を共有する傾向があります。人々が感情を共有することは正常であり、歓迎され、受け入れられます。
日本はどっち?
それでは、わたしたち日本人は、中立的なのか感情的なのかどちらなんでしょうか?面白いデータがあるのでご紹介します。感情を表さない(=中立的)と答えた各国の比率を表したグラフが以下となります
なんと日本が、最も感情を表さない国のようです。たしかに、日本人は何考えているのかわからない、議論でも情熱が感じられないなど言われますが、ダントツに中立的なようです。同様に、中立的な文化には、インド、ドイツ、オランダ、英国が含まれます。一方、感情的な文化には、フランス、ロシア、スペインなどがあります。これらの国では、感情を表に、時にはオーバーに表現します。また、人々は体をふれあうことに抵抗がなく、しばしばキスしたり、抱擁したりします。
ビジネスコミュニケーションにおける特徴とヒント
「中立的」「感情的」それぞれの特徴をご紹介しましたが、これらの感情の表現と認識の違いは誤解を招く可能性があります。両者の違いから、中立的な人々を「興味がない、熱意がない」と判断したり、感情的な人々を「合理的でなく、プロフェッショナルでない」とみなす人もいます。よって、これらの文化的な認識の違いは、日々のコミュニケーション全般において影響をあたえることになります。以降では、お互いに価値観の異なる人々との異文化理解、異文化コミュニケーンにおいて気を付けるべきことをご紹介します。
中立的文化でのビジネスにおける特徴とヒント
■特徴
- 感情を表しません。それが、合理的でプロフェッショナルであると信じています
- 感情は、非言語コミュニケーション(表情、体の動きその他)にあらわれます
- 安定した口調は、真面目・思慮深さとを表します
- (そのようにみえない場合もありますが)ちゃんと感情があります
■Tips
- 人よりも目的/目標に焦点をあてましょう
- 本当の感情を表現していない可能性があるため、非言語コミュニケーションに注意したり、行間をよんでください。
- 口調や表現の欠如は、興味がないことを示しているのではありません。
■注意事項
- 露骨な表現や行動を避けてください
- あなたの非言語コミュニケーション、ボディーランゲージが否定的な感情を伝えないように注意してください。
感情的文化でのビジネスにおける特徴とヒント
■特徴
- 感情をあからさまに表示します
- 議論における割込みやちょっかいは、興味の表れです
- 誇張されたトーンは、情熱の表れです
- (そのようにみえない場合もありますが)ちゃんと論理的に考えます
■Tips
- 目的/目標よりも人に焦点をあてましょう
- 感情を使って、あなたが望むものとあなたの目標を伝えましょう
- 信頼関係を築くために感情をあらわしてください
■注意事項
- 過剰な表現をプロフェッショナルではないと判断しないでください
- 過剰な表現にビビらないでください
事例
以降で、わたしおよび周囲のメンバーが経験した異文化コミュニケーションの事例をご紹介します。
具体例① ~フランス人の同僚との議論~
私の弟が勤務する会社の経営者がフランス人となり、フランス人の同僚が出来き、新製品に関する議論にそのフランス人が初めて同席した時のことです。その議論は、いつもはすんなりと終わる議論だったようですが、そのフランス人が多くの質問を行い、時には感情をあらわにしながら自己主張して、非常に熱を帯び緊張感を伴ったものになったそうです。いつもは10分程度ですむようなことが、1時間もかかってしまったとか。
そのあと、弟がそのフランス人と仲良くなって聞いたところによると、フランス人は、自分の頭で考えた内容を正確に相手に伝達することを初等教育で徹底されており、議論をある意味知的エクササイズととらえているとのことでした。そのため、面白いテーマだったためにたくさんの質問をしたとのこと。
いわゆる「空気を読む」ことを重要視し、会議ではすんなり議案を通すことに注力してしまいがちな、旧来型の日本人の会議とは真逆であると言えるでしょう。弟も、その後フランス文化を勉強し、異文化理解を深め、意見をオープンに、感情もあらわに議論するようになって仕事はスムーズに進むようになったとのことでした。
具体例② ~ブラジル企業とのプロジェクト~
とある企業の業務改革プロジェクトを支援した際のことです。日本と全世界の販社と製造拠点との間のビジネスプロセスおよびシステムを見直すことで、販売機会損失回避、在庫削減を目的としたプロジェクトでした。プロジェクトは順調に立ち上がりつつあったのですが、ブラジル子会社からの協力が得られず、早くも暗礁に乗り上げ始めてしまっていました。
トラブルの原因を探るために、日本側とブラジル子会社間のテレビ会議が行われたのですが、日本側は遅れを取り戻そうと、詳細なタイムラインにしたがって議論を進めようとする一方、ブラジル側は非協力的な対応が続いていますです。その後、現地の日本人駐在員に間に入ってもらって判ったのですが、日本人のチームは相手に馬鹿にされないよう、プロフェッショナルに見られようとポーカーフェイスになり、クールに装いながら議論をすすめていたようです。一方、ブラジル人は、そんな無表情の、何考えているかわからないようなやつらと仕事をしたくないということからコンフリクトがおこっていたようです。
その後は、日本人駐在員のアドバイスもあり、日本人は感情を表に出すようになってから、ときには衝突はありつつも、以前よりは格段にスムーズに会議が進むようになりました。
まとめ
本記事では、7dimensions of cultureの1つの次元である「中立的」「感情的」の特徴と異文化理解、異文化コミュニケーションにおけるヒントに関してみてきました。その中で、国際的な文化の違いの2つの事例をご紹介しましたが、これらの文化の違いは、日本企業間や日本人同士でも起こることです。たとえば、官公庁やオールドエコノミーに属する人々と仕事をする際には、服装からなにから気を使い、会議ではお互いあまり感情に出さない一方、相手の表情や目線を追いながら相手の真意を読もうとします。一方、そうではない、IT系のよりカジュアルな人々と仕事をする際には、お互い率直に意見や感情を出し合い、共有します。ぜひ、自分自身や同僚についても分析してみてはいかがでしょうか?きっと、その人々との意見や感情の表現の仕方、意図の読み方に向けたヒントを得ることができるはずです。
異文化理解に関して詳しく知りたい方は、以下の書籍などを参考にするとよいと思います。ご参考まで
また、コミュニケーションの基礎となる英語を学びながら、様々な文化、そして戦略立案やマーケティングといったビジネスにおいて必須の知識を学べるオンライン英会話スクールがあるので、よかったら試してみてください。
コメントを書く